『カズオブログ』管理人のカズオです。
先日、大阪の運送会社が社員による横領被害を受けたにもかかわらず、年金事務所に厚生年金の猶予を認めてもらえず、売掛金を差し押さえられて倒産危機に陥ったというニュースが話題になりました。
「法律で猶予が認められているのに、なぜ?」と感じた方も多いと思います。慎重派の私も、これは他人事じゃないと思って調べてみました。
厚生年金にも「猶予制度」がある
意外と知られていませんが、厚生年金保険料には納付を最大1年間猶予できる制度が存在します。
国税徴収法の規定が社会保険料にも準用されており、次のような事情がある場合に「換価の猶予」や「滞納処分の停止」が認められる可能性があります。
- 災害・盗難・横領などの被害を受けた場合
- 廃業・休業を余儀なくされた場合
- 業況の著しい悪化など、事業継続が困難な場合
- 納付が困難と認められるその他の事情がある場合
横領被害はこの「被害を受けた場合」に該当するとされており、今回の裁判でも厚生労働省の社会保険審査会が「猶予を考慮せずに行った差し押さえは適切でない」と判断しています。
猶予申請に必要なものと手続きの流れ
猶予は「口頭で相談しただけ」では認められません。正式な書面による申請が必要になります。これが今回のトラブルの一因にもなっています。
一般的に用意が求められる書類は次のとおりです。
- 猶予申請書(年金事務所の所定様式)
- 直近の決算書・収支状況がわかる資料
- 被害の事実を証明する資料(横領の場合は被害届・刑事告訴の書類など)
- 今後の納付計画や資金繰り表
申請先は、会社が加入している管轄の年金事務所です。日本年金機構の公式サイトで最寄りの事務所を確認できます。
口頭相談だけで終わらせないことが大切
今回のニュースで気になったのが、「最初に相談したとき、書類提出を案内されなかった」という点です。
担当者の口頭説明だけを信じて動くのは危険。「猶予は口頭で断られたから無理」と思って諦めるのではなく、必ず書面での申請手続きを確認するようにしましょう。
年金事務所によって対応が違うのはなぜ?
今回のニュースで衝撃だったのが、全国50か所の年金事務所に電話調査をしたところ、「横領が猶予の対象になる」と正確に答えられたのがわずか5か所(1割)だったという事実です。
カズオ担当者によって知識の差がこんなにあるとは、正直驚きました
年金事務所は全国に約300か所ありますが、対応する職員によって制度の理解度にばらつきがあるのが実態のようです。「知らなかった」では済まない話ですが、現実としてこうした状況があることは知っておいたほうがいいと思います。
だからこそ、相談する側も制度の基本を把握しておくことが大切です。「猶予制度がある」と知っていれば、担当者に誤った案内をされても気づくことができます。
猶予を断られたときの対抗手段
もし年金事務所の対応に納得がいかない場合、次のような手段があります。
- 社会保険審査会への審査請求
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厚生労働省内の審査機関。差し押さえや処分の不服申立てが可能。
- 日本年金機構の上位窓口へ相談
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担当事務所の対応に問題がある場合、本部や地域部門への相談も選択肢。
- 弁護士・社会保険労務士への相談
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申請書類の作成や交渉サポートを専門家に依頼することができる。
- 行政訴訟(提訴)
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処分の取り消しや違法確認を裁判所に求める手段。最終的な手段となる。
今回のケースでは、社会保険審査会への審査請求が功を奏し、差し押さえの取り消しが認められました。時間とエネルギーはかかりますが、正式な手続きを踏めば救済の道はあります。
中小企業の経営者・担当者が今確認したいこと
今すぐ問題がなくても、万が一のときに備えて頭に入れておきたいことをまとめました。
- 猶予申請は口頭ではなく書面で行う
- 被害の事実は早めに書類で記録・保全しておく
- 年金事務所の回答は録音・記録しておく
- 担当者の口頭説明だけを信用しない
- 対応に疑問があれば専門家や審査会への相談を検討する
確認先は日本年金機構の公式サイト(nenkin.go.jp)です。「保険料の猶予」「換価の猶予」で検索すると、申請書様式や手続きの概要が確認できます。
制度を知っていることが自分を守る
今回のニュースは「制度があっても知らなければ使えない」という現実をよく表していると思います。年金事務所の職員でさえ知識にばらつきがある以上、経営者や担当者自身がある程度制度を把握しておくことが大切です。
もし資金難や予期せぬトラブルで社会保険料の納付が難しくなった場合、まず「猶予制度があること」を思い出してください。そして、口頭で断られても諦めず、書面での正式申請を試みることが重要です。
焦って判断するより、まず日本年金機構の公式情報と専門家に確認してから動くのが、遠回りに見えて一番確実な方法だと思います。皆さんの会社や生活を守るために、ぜひ頭の片隅に入れておいてください。


